神戸そよかぜ法律事務所HPへ戻る

« 司法修習クラスゴルフコンペ | メイン | 東電OL殺人事件無罪判決②~証拠開示~ »

2012年11月08日

東電OL殺人事件無罪判決

弁護士の富田です。

11月7日(水)に東京高等裁判所において、いわゆる東電OL殺人事件で逮捕・起訴され、いったんは無期懲役が確定した元受刑者に無罪判決が言い渡されました。

この事件は、日本の刑事司法の持つ様々な問題点を浮かび上がらせた事件であったと思います。状況証拠による事実認定や証拠開示等です。今日のブログでは、その問題点の一つである検察官による控訴を取り上げたいと思います。

現在の日本の刑事訴訟法では検察官も被告人(弁護人)と同様に量刑不当や事実誤認を理由として控訴を行うことができます。しかし、これでは一度無罪判決を受けた被告人を再度有罪の危険性にさらすという意味で憲法第39条に違反するという見解が根強く主張されています。諸外国のなかには検察官による控訴を認めていない国も存在します。

この事件で検察官による控訴が禁じられていた場合には、元受刑者は平成12年の一審判決の時点ですでに刑事手続から解放されており、その後無実の罪で服役することもなかったといえます。
この事件に限らず、一審の無罪判決に対して検察官が控訴した結果、控訴審において一審の無罪判決が覆った事件において、冤罪の可能性が根強く指摘されている事件もあります。名張毒ぶどう酒事件や福井女子中学生殺人事件などがそれにあたります。検察官による控訴を制限すべきではないかということについて検討すべきではないかと思います。

もっとも、高等裁判所が無実の被告人を確実に無罪にするのであれば、このような議論をする必要も少なくなるのですが、それがあまり期待できないというのが現在の我が国の刑事司法の悲しい現実です・・・。

投稿者 staff : 2012年11月08日 22:22

コメント