神戸そよかぜ法律事務所HPへ戻る

2016年05月11日

MBOをめぐる大阪高裁平成27年10月29日判決

弁護士の富田です。

私が弁護団の一員として関与したMBO(マネジメント・バイアウト)をめぐる株主代表訴訟の控訴審判決(大阪高裁平成27年10月29日判決)が判例時報2285号(平成28年4月21日号)に掲載されています。

興味のある方は是非お読み下さい。

投稿者 staff : 10:56 | コメント (0)

2016年05月02日

経済同友会の政策提言

弁護士の富田です。

企業経営者の集まりである「経済同友会」という団体が今年の3月31日に「経済同友会政策提言要覧2015」と題する政策提言を出しています。詳細については経済同友会のホームページから見ることができます。

その中に司法制度についてもいくつか提言がなされています。
憲法裁判所の創設等傾聴に値する提言もある一方で法曹養成制度について以下の提言がなされていることは看過できません。

「法科大学院でのプロセス教育や法曹養成制度改革の基本理念を否定する予備試験は廃止する。」(以下、「提言①」といいます。)。
「司法研修所の機能は、裁判官や検察官の養成に特化する。」(以下、「提言②」といいます。)

提言①については、要するに法科大学院制度を温存させるために予備試験を廃止しようとするものです。法科大学院制度の問題点についてはすでにこのブログでも何度も取り上げてきました。「法曹養成制度改革の基本理念」として語られている「プロセス教育」なるものが旧司法試験制度に対する悪意のあるレッテル貼りから出たものに過ぎないことについても先日のブログでも書いたとおりです。提言①は、このような問題点の多い法科大学院制度を温存する一方で、受験資格に制限が無く誰もが受験できて公平性・多様性という旧司法試験制度の良さを引き継いだ予備試験を廃止しようとするものであり到底容認できるものではありません。

しかしそれよりも問題が多いのが提言②です。
提言②は、弁護士の養成と検察官及び裁判官の養成とを分離するものであり、戦後の統一修習という理念を真っ向から否定し、我が国の法曹養成制度を戦前の制度に戻すことを目指すものです。
統一修習制度のもと、私たちは弁護士志望であったとしても検察官や裁判官の実務を経験しました。これは一見すると無駄のように思えるかも知れませんが、相対立する当事者や裁判官の仕事、思考過程を経験することで弁護士としての仕事に生かすことができます。
このような統一修習という理念を捨て、我が国の法曹養成制度を戦前の制度に戻すことを目指すとは時代錯誤も甚だしいと思います。

投稿者 staff : 14:43 | コメント (0)

2016年04月14日

一発勝負の弊害??

弁護士の富田です。

今日も法科大学院制度のことについて書こうと思います。

法科大学院制度の導入に際して、よく「一発勝負で合否を決めるのは良くない。法科大学院をつくって『プロセスによる法曹養成』を行うべきである。」ということが言われました。
しかし、従来の法曹養成制度は本当に「一発勝負」と呼べるものでしょうか??

まず、旧司法試験に合格するためには、毎年5月から10月にかけて約半年にわたって行われる3回の試験に合格しなければなりません。
まず5月に行われるのが短答式試験で、これは大学受験でいうところのセンター試験のようなものです。
短答式試験に合格した者のみが7月の論文試験に進むことができ、自らが書いた答案を採点者に読んでもらう機会を得ます。
そして、論文試験に合格した者のみが10月に行われる口述式試験に進むことができます。口述式試験は、受験生1人につき2名の司法試験員(著名な学者や司法研修所の教官等の実務家で構成されています。)から様々な質問がなされます。法律を理解せずに各論点のみを丸暗記していたのであれば、万が一論文試験を乗り切ったとしてもここで理解不足が露呈します。この口述式試験でも100名近い受験生が不合格となるため決して気を抜くことはできません。かつ口述式試験の母集団は、いうまでもなく全員が論文試験を合格した猛者です。

このようにして旧試験では、約半年にわたって3回行われる試験全てに合格した者のみが法曹となる資格を得ることができました。

このようなことからも分かるとおり、旧司法試験は決して「一発勝負」ではなかったのです。

そして司法試験に合格した後は、現在の制度よりも期間が長く(私たちのときは1年半でした。)、給費制の下での司法修習を受けることができていました。またほぼ全員が法律事務所に就職することもできていましたから、オンザジョブトレーニングを受けることもできていました。
旧来の制度のもとではこのような「プロセス」を経て法曹が養成されていたのです。

仮に、旧司法試験が「一発勝負」であれば新司法試験も1回の試験の点数で合格者を選抜するのですから「一発勝負」になるはずです。むしろ、新司法試験は短答式試験と論文式試験を同時に実施し、かつ口述式試験もなくなったのですから、より「一発勝負」の色彩が増しているとさえいえます。

「旧司法試験は一発勝負により司法試験の合否を決めるものであり良くない制度である。」というのも旧司法試験に向けられた悪意のあるレッテル貼りといわざるを得ません。

投稿者 staff : 11:19 | コメント (0)

2016年03月16日

日本弁護士連合会(日弁連)臨時総会③ ~旧司法試験制度の弊害?~

弁護士の富田です。今日も引き続き日弁連の臨時総会について書きます。

先日の臨時総会の場において、1号議案及び3号議案に賛成する意見の中に、何度か「旧司法試験制度がもたらした弊害の反省のもとに法科大学院制度が誕生したのである(だから旧司法試験制度に戻すようなことはしてはならない。)。」という言葉が用いられていました。ここにいう「旧司法試験制度の弊害」とは何かについて聞いていると、例えば「旧司法試験制度では司法試験予備校が隆盛を極めており、司法試験受験生が大学の講義に出席せずに予備校の講義ばかりに出席していた。」といったものです。
この類の批判は法科大学院制度が議論されていた平成12年ころから存在しており、法科大学院制度創設の理由になったことは間違いないと思われます。

しかしこれらは本当に「弊害」と呼べるものでしょうか?私はここに旧司法試験制度や司法試験予備校に対する悪意のあるレッテル貼りがなされているように思えてなりません。

確かに旧司法試験制度の最後ころには司法試験予備校が隆盛を極めており、ほぼ全ての合格者が何らかのかたちで司法試験予備校を利用していました。私も入門レベルの講座から司法試験予備校を利用しはじめ、最終合格するまで利用していました。大学で勉強していた時間より司法試験予備校で勉強していた時間の方が長かったように思います。

しかし、これは大学における法学教育が機能していなかったからに他なりません。
私が大学に在籍していたころは、大学教員の仕事はまずもって研究に重きが置かれており、教育は二の次という扱いを受けていたように思います。私が大学で受講した講義でも、教授が自らの書いた教科書を持ってきて、それをただひたすら棒読みしていくだけという講義が当たり前のように行われていました。そんな講義を聴いただけでは司法試験に合格できるはずがありません(もちろんなかには教育に力を入れている教授も一定数存在したことは事実ですが決して多数派ではありませんでした。)。
これに対して司法試験予備校でそのような講義をしていたのでは即座に受講生からクレームがありますし、そもそもそんな講義に受講生が集まるはずがありません。司法試験予備校の講義は法律の基礎から体系立てて講義してくれる分かりやすいものだったと記憶しています。そのため必然的に大学の講義で司法試験の勉強をするよりも司法試験予備校を利用する受験生の方が多かったのです。

このような従来の大学での法学教育の反省をすることなく、「司法試験予備校は悪であり大学教育こそが正しいのだ。」という前提のもとに法科大学院が創設されたのです。

また、「司法試験予備校での教育は、論点毎の論証の丸暗記などの受験技術のみに偏っており安直な教育しか行っていない。」というのも当時よく聞こえてきた批判です。先日の臨時総会の場でも旧司法試験の受験経験もある法科大学院出身の弁護士が「自分は旧司法試験受験生だったころには司法試験予備校で論証をただ丸暗記していた。法科大学院に通うようになって何故その論点が出るのかを考えるきっかけとなった。」と述べている方がおられました。これも旧司法試験制度や司法試験予備校に対する誤ったレッテル貼りに他なりません。

確かに、旧司法試験制度の時代には論点毎にあらかじめ論証をまとめておく「論点カード」なるものが存在していました。しかし、それはあくまでも典型論点についてあらかじめ論証を記憶しておくことによって時間を節約し、応用部分について考える時間を確保するために用いられていたのであり、「論点カード」を記憶して再現さえすれば合格できるというものではありませんでした。
旧司法試験の問題は著名な学者・実務家が1年かけて議論を重ねて作成した良問であり、決して典型論点の丸暗記だけでは対応できない「ひねり」の部分が必ず存在していました。また論文試験の6科目12問の中には、必ず考えたことのない問題が存在しており、丸暗記のみで対処できるものではありませんでした(この傾向は今でも変わっていないと思われます。)。
そのため、この「ひねり」にどのように対処するのかというのが重要であり、その法的思考能力を身につけた者から合格していたのです。現に私が司法試験予備校で受けた講義でも「論点カードを暗記して再現するだけで司法試験に合格できる。」などということを言う講師はいませんでした。

このように法科大学院制度は旧司法試験制度に対する誤った認識から出発したものといわざるを得ません。

投稿者 staff : 11:43 | コメント (0)

2016年03月15日

日本弁護士連合会(日弁連)臨時総会② ~3号議案~

弁護士の富田です。

3月11日の日弁連の臨時総会での結論についてはすでにこのブログでお伝えしましたが、今日のブログでは当日に1号議案の修正案として出された3号議案のことについて述べようと思います。

3号議案の内容はおおむね以下のとおりです。
①1年間の司法試験合格者数を1500名「以上」とし、現在の年間1800名の水準を急激に減少させないこと。
②法科大学院制度について奨学金をより充実させ、予備試験については「制度趣旨を踏まえた運用」を行うこと。
③司法修習生に対する給費制を復活すること。

この3号議案は、主として法科大学院で教鞭をとっている弁護士や法科大学院を卒業した弁護士で提案されたものです。この3号議案と1号議案の最大の違いは、1年間の司法試験合格者数の「1500名」というのはあくまでも「下限」であり、最大1800名程度まで合格させる余地を残すというものです。

3号議案の提案理由やそれに賛同する意見の中で繰り返されていたのは、「法曹志望者数をこれ以上減少させないために」というフレーズでした。要約すると「司法試験合格者数を減少させて司法試験を難しくすれば法曹を目指す方が躊躇して法曹志望者数が減少してしまう。だから急激に司法試験合格者数を減少させてはならないのだ。」というところでしょうか。

しかし本当にそうでしょうか?

実は司法試験の競争が今よりも激しかった旧司法試験時代(合格率は2パーセントから3パーセントの間でした。つまり100人受験して3人も合格しないという試験だったのです。)の方が志願者数は多かったのです。

私が初めて司法試験を受験した大学3回生のとき(平成10年)には、司法試験出願者数は3万人を超えました。そこから出願者数は年々増え続け、私が合格した平成15年にはついに5万人を超えました(因みにここ数年の司法試験出願者数は1万人を割り込んでおり、私が合格した年の5分の1以下の出願者数になっています。)。

このことから見ても「試験が難しければ志願者数が減少する。」という論理が明らかな誤りであり、むしろ逆であることが分かると思います。

後輩である司法試験受験生のことを思うのであれば、むしろ合格者数を抑制し、全員が就職できてオンザジョブトレーニングを受けられる環境を整えることこそ重要だと思います。

3号議案の提案理由やそれに賛同する意見を聞いていて一番感じたのはこの前提が抜け落ちているのではないかということでした。

なお、この3号議案は反対多数で否決されました(私も反対票を投じた一人です。)。

投稿者 staff : 10:43 | コメント (0)

2016年03月14日

日本弁護士連合会(日弁連)臨時総会

弁護士の富田です。
多忙のためブログの更新が長期間にわたり滞ってしまいました。申し訳ありません。
久しぶりの更新になります。

先週3月11日(金)は、東京霞が関の弁護士会館において、日弁連の臨時総会が開かれたので出席してきました。
議案は、いわゆる法曹養成制度の改革に向けた議論です。具体的には日弁連として、どのような法曹養成制度を目指していくのかを話し合うための総会でした。

この場において主として二つの議案が議論されました。
ひとつは、日弁連執行部の提案した議案です(以下、「1号議案」といいます。)。内容はおおむね以下のとおりです。
①1年間の司法試験合格者数を早期に1500名とすること。
②予備試験については「制度趣旨を踏まえた運用」を行うこと。
③司法修習生に対する給付型経済支援として「修習手当」の創設を行うこと。

これに対して弁護士有志で提案したもう一つの議案が議論されました(以下、「2号議案」といいます。)。2号議案の内容はおおむね以下のとおりです。
①1年間の司法試験合格者数を可及的速やかに1000名以下とすること。
②予備試験について受験制限や合格者数制限など一切の制限を行わないこと。
③司法修習生の給費制を復活すること。

この二つの議案の違いは大きく分けると以下のとおりです。
①1年間の司法試験合格者数を何名とするべきかということ(1号議案は年間1500名、2号議案は年間1000名以下としています。)
②予備試験の取扱いをどうするか(1号議案は予備試験は「制度趣旨を踏まえた運用」を行うべきとしています。2号議案は予備試験の受験資格制限を行うべきではないとしています。)
厳密に言えばこの他にも「司法修習生の給費制復活」と「『修習手当』の創設」の違い等細かな相違点はありますが、今回は省くことにします。また当日は1号議案の修正案として3号議案や4号議案も提案されましたがこれについても今回は省略することにします。

結論としては、1号議案が賛成多数で可決され、2号議案は否決されました(可決された決議文については日弁連のホームページで見ることができます。)。

私は2号議案に賛成していたので、この結論は率直に言って残念だとは思います。

この総会でのやり取りや議案の内容についてはこれからも何度かこのブログで取り上げていこうと思います。

投稿者 staff : 10:37 | コメント (0)